小さな海の観察室
MARINE LIFE / INTERACTIVE FIELD NOTES
01 — ASCIDIAN METAMORPHOSIS

マボヤの変態と一生

泳ぐ幼生が、岩にくっつくホヤになるまで。
スライダーで、からだと神経の変化を観察しよう。

OBSERVATION
内部を透かした模式図
HALOCYNTHIA RORETZI · マボヤ
稚体・成体で試せます
LOOK CLOSER

「脳が退化する」の、その先。

幼生の「脳」はどこ?

頭に見える体幹の背側には、ふくらんだ感覚胞があります。マボヤの幼生では、光に関わる眼点や、重力・姿勢に関わる平衡器を備えます。後方の神経節や尾の神経索とともに、泳ぐための神経系を構成します。

何が退縮する?

付着して変態すると、尾とともに尾部の神経索が失われ、幼生の感覚器も退縮します。拡大図では、尾部の神経索が短くなり、幼生型の感覚器が退縮する部分に注目できます。個々の細胞の数や消失の順番を再現したものではありません。

成体にも神経系がある

変態後にも、ふたつの水管の間に神経節をもつ神経系があります。刺激への応答や体の収縮などに関わります。「自分の脳を食べて、神経が何もなくなる」という理解は正確ではありません。

細胞レベルでは? — カタユウレイボヤの研究から

細胞を追跡した研究では、幼生のニューロンの大部分が失われる一方、神経系を支える上衣細胞(グリア細胞の一種)が残り、その一部から成体のニューロンが生まれることが示されています。退縮と、残った細胞を使った再構築の両方が起こります。

ここはマボヤで直接確認した細胞系譜の説明ではありません。このアプリの外形はマボヤをモデルにし、神経系の大きな変化を概念図で示しています。細胞の引き継ぎに関する上の説明は、別種であるカタユウレイボヤの研究に基づく補足です。

進行度は実時間ではありません。段階は説明のために分けており、実際には変化が重なります。外形・器官の位置・大きさは模式化し、変態後の成長期間も短縮しています。体の姿勢変化は体内再配置を見せるための表現で、個体全体がその角度だけ回転するという意味ではありません。神経の図は細胞を追跡した映像ではなく、幼生型の構造の退縮と成体型への再構成を示します。内部表示の透明さと神経の色は説明用です。水管の収縮と拡大図の光点は応答の概念表現で、実際の神経回路や信号速度を再現していません。

変態のあとも、ゆっくり育つ。

数年かけて、食卓の大きさへ

マボヤの寿命は約5年とする解説があり、養殖では収穫まで3〜4年育てます。変態を終える時期と、大きく育つまでの期間は別です。寿命は資料に基づく目安です。

日本で食べるホヤ

主に三陸などのマボヤと、北海道などのアカボヤ。今回のモデルは、赤橙色の体に突起があるマボヤです。ホヤは貝ではなく、脊索動物の仲間です。

旬は種類と地域で違う

マボヤは岩手では6〜7月が旬、宮城の生産時期は5〜9月。アカボヤは北海道・野付地域の資料で8〜10月が漁期とされています。旬と漁期は同じ意味ではありません。

参考資料をひらく北海道:マボヤの外形とくらし ↗マボヤ幼生の形態・神経系(2022)↗マボヤの脳形成の細胞系譜(2004)↗研究著者による解説:神経系の再構築(2011/カタユウレイボヤ)↗日本栽培漁業協会:マボヤの寿命の目安 ↗岩手県水産技術センター:水管・成長・旬 ↗宮城県:ホヤの生産時期 ↗北海道立総合研究機構:野付のアカボヤ漁業 ↗